【文化複合施設】臨時議会の議論を経て、未だに残された問題だと私が考える点③

②の続きです。


3)議会が議論に必要とするときに、必要な情報を当局が示せなかった。
2)の結論とも重なりますが、結局、臨時議会の議論が4日間にまで長引いたのは、議会が議論の前提としていた市の説明や根拠が、総崩れになってしまったからです。

その原因が、表題にも示しているとおり、「議会が議論に必要とするときに、必要な情報を当局が示せなかった」点です。
例えば、1月29日の議員説明会の席上で、議会側は、初めて「国からの交付金の上限額が、1施設あたり30億円から21億円に引き下げられていた」ことを知りました。
これは、これまで議会が文複特別委員会で行ってきた約3年以上の議論の根底を全く覆すものです。
議論の根底が崩れてしまったのに、従来想定していた足場から議論を行うことなどできるでしょうか。
その前提を新たに組み込まなければ議論などできません。

そして、こういったことが、臨時議会中には何度も起こりました。
市が交付金の計算に使用していた施設の平米単価がなぜ一度受けた説明と違うのか。
維持管理費が、臨時議会での答弁と、住民説明会で違うのはなぜか。
さらには、もともと見せないと言われていた資料が後出しで徐々に出されること。
このように、所々で新たな事情が明らかになっていては、根拠を持って積み上げる議論などできません。

根拠を持って積み上げる議論が時間内にできない、ということは、本来必要な議論の過程を経ず、あやふやな部分を残したままになってしまうということです。
市が適切な時機に、適切な情報を議会に提示できない、つまり、議会が議論に必要とするときに、必要な情報を当局が示せないことは、こういう問題を引き起こします。
そして、今臨時議会では、根拠を持って積み上げる議論ができずにあやふやな部分を残したまま、質疑打ち切りとなり、そのまま議決に進んでしまいました。
これら一連の流れ自体が、大きな問題です。


以上、大きく分ければ3点が、私が問題だと考えた点です。
これ以外にも、本来であればもっと議論すべき問題点は多々あります。

しかし、今回の臨時議会で、将来50年にわたって使われ続けていくであろう文化複合施設の建設がほぼ決まりました。

こういった施設の建設は、市民の方が、最終的には良いものを作ってくれた、使って日々の生活が良くなった、ということを実感してもらうことが重要です。
そのため、施設建設に踏み出す際には、そういう将来への期待感を持って、多くの市民から応援してもらえるように市民と歩調を合わせながらスタートを切っていくべきでした。
けれど、そういう「納得感」を市民の方々に持ってもらいながら、文化複合施設建設のスタートを切ったとは言えません。

市民生活や、将来の市政運営を考えるのであれば、市の財政負担がどうなるのか、また、本当に50年後も文化複合施設は使われ続けるのか、という将来の社会情勢や個人の嗜好の変化も合わせて予測し、議論に組み込んでいくべきでした。
それにもかかわらず、施設建設に進むに当たって、必要な議論を根拠を持って積み上げることもできず、市民の方への説明も不十分であると再三指摘される現状は残されたままです。

今回のように、複合施設建設にあたって、市民の方にとって必要な情報が示されていないにもかかわらず、建設だけを先に進めようとする当局の姿勢、それでは、市民にとって使いやすく、完成を喜んでもらう施設を作ることには繋がりません。
そのような過程を目の当たりにしているからこそ、施設を作るにあたって約63億円もの支出を認め、今後維持管理費を約1.5億円以上も支出していく、ということはやはり認めたくはありません。
ですので、今回の予算案に対して私は反対に票を投じたわけですが、今後はこの施設を建てたことで財政負担が重くならないよう注視していく必要は当然あります。

さらには、今回の臨時議会等をご覧になって、「どういう議会運営をしているんだ」というお叱りのご意見もいただきます。
今後は、どうすればより健全な市政運営ができるのか私なりに考えを示していくとともに、その実現に向けて動いていきます。

【文化複合施設】臨時議会の議論を経て、未だに残された問題だと私が考える点②

①の続きです。


2)将来の市民負担となる、文複に必要な維持管理費はいくらになるのか、という説明が遅すぎた。

文化複合施設を建設すると、年間の維持管理費は、図書館部分の人件費を含めて約1億5800万円だと臨時議会中に、市側と議会側とで共通認識ができました。
しかし、この共通認識がはっきりとできたのは、2月15日の臨時議会中です。
この日は臨時議会の最終日であり、そんな日に共通認識ができるのは遅すぎます。

また、維持管理費で問題なのは、2月11日の住民説明会では、維持管理費が「約1億700万円」と言ったり「約1億3000万円」と言ったり、説明がぶれていた点です。
何より、「維持管理費に人件費を入れるべき」と再三議会側から言っていたにもかかわらず、当局は「入れません」と言い、平成30年4月の特別委員会でも人件費は、新たに増員する分しか計上していませんでした。
そういった経緯があるにもかかわらず、最終的に図書館部分の人件費も含めて「約1億5800万円」だと結論付ける。
これでは、何を根拠に議論をしていけばいいのか、その土台もあやふやになります。
この点は、次の項でも言及します。

維持管理費が約1億5800万円はかかるかもしれない、と言われたことは、文化複合施設の使用されるであろう期間、約50年にわたって、今後、市はそれだけの支出を行うことを実質的に決定した、ということです。
これが約1億円と言われていたら、それは、維持管理費を過小に見積もっていた、ということです。

さらに私が心配するのは、「維持管理費をどのように捻出するのか」という質疑に、市長が答えを持っていなかったことです。
「今後5年間で行財政改革を行う」と言われていましたが、市長の言う「行財政改革」とは一体何を指すのかも最後まで説明がありませんでした。

私は、「行財政改革」と安易に言うことには反対です。
特に新宮市においては、人件費、扶助費(医療や福祉などに使う削れないお金の部分)、公債費(市の借金を返済していくお金。これも削れません)の割合が高く、削れる部分といえば人件費に目が向くでしょう。
しかし、人件費を削るのにもどこかで歯止めはかけなければならないし、それを行うのであれば、住民説明会でも質問のあった「まず、市長や議会が身を切るべきではないか」という問いにきちんと答えなければなりません。
市の命運をかけたプロジェクトであるならば、なおさら住民理解を重視しながら進めなければなりません。
市の財政が厳しいのは、周知の事実です。
その財政的な厳しさを見据えて、文化複合施設という新しい施設を維持管理していくお金をどのように出そうとしているのか。

ここに答えが出なければ、将来的に、他の分野(例えば福祉や教育、道路の整備や補修など、生活に必要な分野だけれども、後回しにされてしまいかねないもの)のお金を削って、施設の維持管理費に当ててしまうことも想像できます。
市民や議会は、維持管理費の捻出のため、他の分野で必要なお金が削られてしまう可能性があるのではないか、という点を心配していたのですが、それに対する明確な回答も得られていません。

これも結局、「将来の市民負担となる、文複に必要な維持管理費はいくらになるのか、という説明が遅すぎた」ことに起因する問題であり、当局は、必要な情報を必要なときにしっかりと明示できていない、というのが私の結論です。

③に続きます。
【文化複合施設】臨時議会の議論を経て、未だに残された問題だと私が考える点③

【文化複合施設】臨時議会の議論を経て、未だに残された問題だと私が考える点①

こんばんは。
北村ななみです。

2月4、5、15、16日に渡って行われた臨時議会において、「文化複合施設」に関する本体建築工事費を含む補正予算案が可決されました。
この議決によって、いわゆる「文化複合施設建設」について、
・約63億円の負担をかけて文化複合施設という文化ホールと図書館の一体型施設を整備すること、
・今後約50年に渡って毎年約1億5000万円の維持管理費を支出していくこと、
この2つが実質的に決まりました。

臨時議会は1日では終わらず、結局2回の延長を経て、16日の未明に終りました。
今回の臨時議会をご覧になった方からは、「一体あの議論で、何が話されていたのか」と問われることも多いです。
これは、その臨時議会での議論、臨時議会に至るまでの議員説明会の様子や住民説明会での当局説明をお聞きになった方からは、議論が不十分だったのではないか、当局は必要な説明をしていたのか、との疑問をお持ちの方もおられるからだと思います。
これについては、私も同意見です。
最後まで納得できる議論はできなかったと認識していますし、当局の説明は不十分だったところもあります。

そこで、これまでの文化複合施設に関する議論を臨時議会、議員説明会、住民説明会も含めて振り返り、一連の議論の中で、何が問題であったかを検証することは重要です。
そして、どういった点を軌道修正していけば、市民の方にも、議会を見て、聞いて、より納得いただける議論ができるかを考えることも同じく重要です。

今回のブログは、特に、臨時議会において何が問題であったかをお示しします。
今後、このブログ上で、一連の議論の中で私が問題であったと考える点、軌道修正を行うべき点を続けて書いていくつもりです。

一つの項が長くなってしまいましたので、3回に分けています。
以下のリンクからも飛べます。
【文化複合施設】臨時議会の議論を経て、未だに残された問題だと私が考える点②
【文化複合施設】臨時議会の議論を経て、未だに残された問題だと私が考える点③


◆今回の臨時議会において、私が問題だと考える点

1)建設費の市の実質負担額が、当初言われていたものよりも増加していたという説明がなかった
市は、文化複合施設建設で新宮市が実質負担する金額は「約17億円」と説明してきました。
けれども、それ以前に、まだ当局が施設建設費の上限を約55億円としていた頃には、市の実質負担額は「約11億円」でした。
これは平成29年度中のことであり、図書館を分棟にしていたいわゆる「2棟案」を検討していた時点の実質負担額です。
ですので、1棟案にし、全体の建設費が増額になったのだから、実質負担額も増えて当然ではないか、それは仕方がないのではないか、と思われるかもしれません。

しかし、私がこの点を問題にするのは理由があります。
それは、「市がもらえる国からの交付金の上限金額は約25億円であること」がしっかりと説明されていなかったことです。

国から「都市再構築戦略事業」の交付金として「かかる事業費の2分の1は補助してもらえる」というのが、市の説明でした。
ただ、これはもっと詳しく見ると、「交付対象事業費」というものが決められていました。
この「交付対象事業費」とは、国が2分の1補助しても良いと認める部分の事業費です。
この「交付対象事業費」は、文化複合施設においては「約50億円」と決められていました。
そのため、全体事業費がいくら増額しようが、実質的に国から貰えるお金は、約50億円の半額、約25億円までしかもらえないのです。

ですので、その50億円をはみ出した部分は、他の支出で賄わなければなりません。
他の支出とは、過疎債や合併債という借金を利用すること、基金の取り崩しという、いわゆる市の貯金を使うこと、一般財源のお金を使うことに、それぞれつながっているのです。

問題は、その説明が最初からなされていたか?市民の方にも説明できていたか?という点と、そもそも当初の設計を対象事業費50億円に収まるようにできていたのか?という点です。
対象事業費が50億円なのですから、そこに収まるように設計していれば、市の実質負担は限りなくゼロに近づけられます。
過疎債や合併債という有利な借金は、複合施設だけに使うものではありません。
残しておけば、道路の補修や老朽化した建物などのハード整備にも利用できるものです。
市内で補修が必要な、老朽化した設備に頭を悩ませているところもあるのではないでしょうか。
そういった部分への補修が、文化複合施設建設に回した分、できなくなるのです。

ですので、市が言う「市の実質負担額は約17億円」というのは、一見、負担が少ないように見えますが、以前の説明からは約6億円も増額していますし、実際には交付金の上限があるため、市の持ち出しが増えたとも言えます。

繰り返しになりますが、全体の事業費を最初から約50億円に抑えるように努力していれば、実質的な市の負担はほとんどなくても済んだはずです。
そういった検討もなく、現実にはかなりの実質負担に対する増額が起こってしまい、それを経緯も踏まえてしっかりと説明できていなかったことは、問題であると考えます。

②に続きます。
【文化複合施設】臨時議会の議論を経て、未だに残された問題だと私が考える点②

市側の説明が不十分だと感じざるを得なかった、文化複合施設建設の住民説明会について

こんばんは。
北村ななみです。

2月11日(月)19時~、丹鶴体育館で「文化複合施設」について、近隣住民への説明会が開催されました。
私もそこに参加し、傍聴させていただきましたが、市民からの質問に対し、市からの説明があまりにもずさんすぎること、また、全く丁寧さを欠いていることなど、とても問題が多い説明会だったと感じました。


説明会の会場はほぼ満員


説明会では、市側から複合施設建設について一通り説明が行われた後、市民からの質問の時間が設けられました。
市民の方からは次々と挙手があり、その内容も、市民としての率直な疑問や忌憚のないご意見でした。
それに対し、市は、例えば「文化複合施設の維持管理費」については、議会で「約1億5800万円はかかりますよね」「そうです」というやり取りを議員と行っているにもかかわらず、市民に対しては「維持管理費は約1億700万円です」とか「約1億3000万円です」といった、ぶれた回答をしていました。
議会答弁と食い違った回答をしていることも問題ですが、市民への説明に対し、はっきりと明言できない回答はするべきではありません。

また、市民の方から「図書館は4階にすべきではない」という意見が多く出されたことも印象に残りました。
これについて、他の市民の方からも「図書館は分離して建設すればよいのではないか」というご意見も出されていました。
図書館の4階部分を分離させる、ということは、現在の国からの交付金の紐づけ上も実際は可能なはずです。
なぜなら、国からの都市再構築戦略事業交付金の上限金額が30億円から21億円に引き下げられたからです。
もともと、「複合施設」でなければ、その30億円の上限いっぱいまで交付金がもらえないと市は説明していたため、図書館とホールは不可分のものだと考えられていました。
しかし、21億円に上限金額が引き下げられたということは、イコール、「複合施設」でなくても施設建設が可能になった、ということです。
21億円までの交付金はもらうことができるのですから、図書館は、十分にその金額内で建設することができます。
市民の方からの要望も強かった、「図書館は4階に設置しないでほしい」という意見は、現在でも、十分再考すべき事項だと考えます。


説明会は、19時からの開催でしたが、時間を延長し、22時近くまで質問が続けられました。
しかし、まだ市民の質問者は残っていたにもかかわらず、市は質問時間を打ち切り、説明会を終了させました。
終盤、市民からは「この説明会1回だけでなく、もっと複数回説明会を行うべきではないか」、「15日の議決が終わってから、説明会を行っても遅い、それより前に説明会が必要」といった声も、多く聞かれました。

私も、その通りだと思いましたし、この1回だけで、複合施設建設について、住民理解が十分に進んだとはとても思えません。
ですので、説明会終了後、市長にも、「15日までに、何度か説明会を開催する考えはあるか」、「説明会を早急に、もっと市内の他の場所でも開催すべきではないか」という話をさせていただきました。
しかし、市長は「最終的に決めていただくのは議員ですから」と答えられました。
「それでは、この住民説明会は何だったのか」との話は最後までできませんでしたが、この言葉を聞いて、本当に、「住民説明会はなんのために行われ、市民のことをなんだと思っているのか?」という思いになりました。

今は、市側の説明が十分市民に浸透し、理解していただくことも完了したなどとはとても言えない状態ですし、このまま、2月15日の臨時議会で議決を行うというのは無理がある、と私は考えています。
遺跡に関してもそうですが、文化複合施設建設についても、もっと時間をかけた、丁寧な説明の場は改めて設ける必要があります。

私が問題だと考える、国からの交付金約25億円確保の不透明な背景

こんばんは。
北村ななみです。
1月31日に書いたブログの続きを書きます。

前回、私は、議員説明会で言われた以下の3点が、新しく表に出された事実だと書きました。

1)文化複合施設建設について、国から貰える交付金(都市再構築戦略事業の採択による交付金)の上限枠が減額されていたこと

2)その減額の打診を国から受けたのが2018年6月であり、その上限枠の減額を最終決定したのが2018年12月18日だったにもかかわらず、この一連の経緯を一切公表してこなかったこと

3)「先送りにする」とされたはずの「熊野学センター」が存在するものとして、交付金の対象になっており、その話を一切説明していなかったこと

これらの情報を議会、市民に対して公表していなかったことが、まず大きな問題です。
しかし、今回は、前回言わせていただいたとおり、これら事実の内の、どういった点が問題なのかを書いていきます。


新たに判明した事実の内、私が、より問題だと思う点は次のとおりです。

1)「先送りにする」とされたはずの「熊野学センター」は、その機能が存在するものとして、交付金の対象になっており、その話は議会・市民には一切説明していなかったこと
これの何が問題なのかといいますと、平成28年2月に、市は、財政的な負担が大きいために、「熊野学センター」という「建物」は先送りにする、と公式に決定しました。
とはいえ、市側は、”熊野学センターの「機能」は残します”、”残すべき「機能」は、文化複合施設の中に入れ込みます”という説明をしていました。
しかし、その残した「機能」に対し、「交付金がもらえる」という説明は、先送りにするという公式決定がされた後、一度もありませんでした

議会側、市民側は、「建物が先送りにされた」=「交付金の対象から外れてしまった」と受け止めており、「建物」としての熊野学センターは、建設の目処が立たなくなった、という理解をしていたのです。
けれども、今回の件で、実際には「熊野学センター」の機能は、交付金の対象として未だに有効だった、ということが明らかになりました。

これは、今まで一切説明がなかったことであり、市が、議会・市民側への理解を求める作業を怠ってきた結果であると私は捉えています。
市側から、上記の状況がもっと早く公表・説明されていれば、「熊野学センター」の「建物は先送りにする」などという議論は見直されていたはずです。
その説明がないまま、熊野学センターは建物が建設されず、交付金がつかないものとして受け止めてきた過程を振り返ると、当時必要だった説明をしなかった事自体が、議会・市民に対する重大な説明不足であり、それが問題なのです。

2)市が言う「熊野学センターの機能」には、国からの交付金約9億円が出される根拠が本当に存在しているのか
「熊野学センター」の建物建設自体は、「財政的な負担が大きすぎる」という理由で先送りになりました。
しかし、市側の説明通り、設計図面には「熊野学センターの機能」を残している部分があります。

ただし、この熊野学センターの機能とされる部分、主には、「熊野学研究室」、「熊野サロン」と銘打たれたエリアになりますが、これらの面積は共有部分を入れて、約1000平米です。
共有部分を除いて、実際の「熊野学センターの機能」だけに絞ると、約700平米の面積しかありません。
これだけの狭い面積に、新宮市の試算上では、国からの交付金として約9億円もの金額が紐づけされているのです。(以下の添付資料参照)

私は、この金額の付け方は実態とかけ離れており、明らかに過剰であると認識しています。
本当に、このような狭い面積に、国も約9億円もの交付金をつけるのでしょうか。
2018年4月時点では、熊野学の機能部分は、建設工事費の概算約5.4億円、施設に占める面積は約905平米でした。
そして、そもそもこの熊野学部分の面積は、ホールと図書館の部分にそれぞれ按分されていたのです。

実は、図書館についても同じことが言えます。
図書館は、2018年4月時点では、建設工事費の概算金額は約10.5億円、施設に占める面積は約1400平米として、説明されていました。
しかし、新たに判明した市の試算上では、概算金額が約19億円に膨れ上がり、面積も、共有部分を含んで約2200平米と大きくなっています。
けれども、なぜ、そのような試算になっているのか。
その背景にあるはずの説明は、次の項で述べる以上の言及はありません。

結果として、熊野学センターの機能と、図書館に、これまでの説明よりも大きな概算金額が見込まれているけれども、その金額の根拠がどうなっているのかの説明が公的に行われておらず、実質、根拠が不明な状態になっています。

3)交付金確保のための概算金額が実態とかけ離れており、根拠のある説明資料が提出されていないため、その計算方法にも疑問が残る
2)で指摘したとおり、施設の実態と、そこに交付されるであろう試算上の交付金の金額が、あまりに乖離している状態が、現在明らかになっています。
なぜ、このような状態になったのかについて、市側は「国との協議において、交付金の申請上、これまでの概算金額の計算方法とは、少し違う方法で行ってよい」との話があったという説明をしています。
上記の添付資料①と②では、交付対象事業費の概算金額が異なっていますが、これは、交付金の上限金額が21億円に下げられた前後で、計算方法が違うからだそうです。

では、それはどのような計算方法の違いなのか。
簡単に言うと、
【変更前】それぞれの3機能にかかる建設費用を個別に積み上げ、全体の概算金額を出していた。
【変更後】全体の概算金額を出し、それをホール、図書館、熊野学センターの3つの機能に按分する。
という変更があったようです。

ただし、このことについて、説明会の後日、改めて、私の方から「変更の前後で、どのような計算方法の違いがあるのか」、「それは何らかの国の要綱に載っているものなのか」、「それとも、運用上の違いとして、口頭で説明されただけのものなのか」という質問をしましたが、この変更に対する根拠のある資料は、今のところ出てきていません。
だからこそ、市側が言う、「この試算は財政的な手法」である、という言葉の信憑性が損なわれる、ということにつながっていると考えています。

計算方法の変更を行うに当たって、どのような根拠があるからそうしたのか、という説明がないために、現状の市の説明をそのまま受け止めると、「ホール部分で当てにしていた30億円の上限に対する交付金が想定通りもらえなくなったため、図書館、熊野学センターの機能に、不足する金額を付け替えている」という捉え方をせざるをえません。
そして、この金額の増加だけを見たら、私は、これは「国からの交付金約25億円を確保する」ための、単なる「水増し」ではないのかと疑わざるを得ないのが現状です。

以上の3点が、前回新たに明らかになった事実を踏まえて、さらに、私が問題だと考える部分です。

繰り返しになりますが、このまま、市が説明したことを額面通り受け取ると、
「交付金の計算方法が変わったとはいえ、その根拠となる説明や説明資料が不十分であり、図書館、熊野学センターの実態を考えると、市が国に対して交付金を請求する請求上の金額は、「水増し」に当たるのではないか、と捉えても仕方がない」、と考えています。
そして、その点は、別途担当課とお話した際にも言わせていただきました。
市と国とが、どのように協議をしていたのかは、いささか見えにくい部分でもあることから、もっと説明に足るような資料を元に、再度説明がほしいところです。


2月4日(月)、10時からは臨時議会です。
私は、こういった新たな疑義が発生したにもかかわらず、建設を進めていくことには反対です。
そもそも、文化複合施設が将来の新宮市の財政を圧迫することになるのではないかという懸念も払拭できていません。

当日は、文化複合施設建設がこのまま進むかどうかの決定、ひいては、今後の新宮市の市政運営を左右する決定が行われます。
多くの方が傍聴に来ていただけるとありがたいですし、ライブ中継もありますので、パソコン、スマホ上からも、状況を見守っていただけると幸いです。

新たな事実が突然表に出された、2019年1月29日の議員説明会について。

こんばんは。
北村ななみです。

本日1月31日付の紀南新聞1面に、議員説明会の記事が掲載されました。
議員説明会は、一昨日の1月29日に行われたものです。
説明会の内容について、当局側の説明で、私が問題だと思った点を書きます。


1月29日の説明会で、市が、これまで議会・市民に一切説明をしてこなかった事実が3点、明らかになりました。

それが、

1)文化複合施設建設について、国から貰える交付金(都市再構築戦略事業の採択による交付金)の上限枠が減額されていたこと

2)その減額の打診を国から受けたのが2018年6月であり、その上限枠の減額を最終決定したのが2018年12月18日だったにもかかわらず、この一連の経緯を一切公表してこなかったこと

3)「先送りにする」とされたはずの「熊野学センター」が存在するものとして、交付金の対象になっており、その話を一切説明していなかったこと

上記3点が、1月29日の議員説明会で初めて、明らかになった事実です。

どれも、議会・市民に公表されてこなかったことです。
そして、これらの事実は、市側が「公表すべきもの」として公表説明したことではなく、説明会の席上で、議員側からの質疑の最中に、その事実が明らかになったものです。
議員側からの質疑がなければ、交付金の減額という話は、まったく表に出されなかったでしょう。
そのように、言われなければ公表しない、という市の姿勢がそもそも問題です。
しかし、明らかになった事実についても、問題な点が多いです。

こちらについては、別途、詳細をブログ上で書きます。


私は、議員説明会の席上で、新たな事実が突然表に出され、それが、これまでの議会への説明、市民への説明を根底から覆すものだったために、臨時議会は開くべきではないと主張しました。
しかし、結局は2月4日に臨時議会が開催され、「文化複合施設建設」の予算の議決が行われることになりました。
それまでに、どういった点が問題なのか、より詳しく説明させていただきます。

施設建設を急ぐあまり、新たに判明した事実の検証や、事実の詳細が市民に対して公的に説明されないまま、施設建設を進めていくべきではありません。

壊すの?残すの?活用するの? ―新宮城下町遺跡について①

こんばんは。
北村ななみです。

旧丹鶴小学校跡地から発見された「新宮城下町遺跡」。

この遺跡が発掘された場所が、市が進めている「文化複合施設」を建設する予定地だということはご存知でしょうか。

せっかく発見されたこの遺跡、文化複合施設建設の際には、「壊される」のでしょうか?
それとも、「残される」のでしょうか?

***

現段階では、市長は、「文化複合施設(文化ホールと図書館)を建設する」ことは明言しています。
しかし、遺跡に関しては、「施設の設計を変更することで保存の可能性を探る」という話にとどめています。

私の現時点での遺跡に対する考えは、以下です。


①1回目の調査で、鎌倉~室町時代までの発掘を行ったが、この時代で、発掘調査をいったん止める。鎌倉~室町時代部分を埋め戻して保存する。
②それ以外の、1回目調査の未調査分と2回目調査分は、今後、学術研究目的の発掘調査に切り替え、最小限の発掘を何年かかけながら、少しずつ行う。
③城下町遺跡は遺跡公園として整備を考え、新宮城跡と合わせて周辺一帯を新宮市の歴史的景観を体感できる施設にする。
④見送りにされた熊野学センターを再度整備し直すこととし、新宮城跡周辺を熊野学の一大研究拠点にする。
⑤新宮城下町遺跡が、国の史跡指定を受けられるようにする。


熊野が面白い、と感じるのは、京都のように、理論と実践のサイクルを、「今、住んでいる場所」で体感できることだと思います。
遺跡を整備し、一帯を研究拠点とすることで、まず、「熊野学」関連で研究をされている研究者の方に新宮に来てもらいやすい環境を作ります。
そこでの研究成果を観光振興につなげたり、ふるさと教育や生涯学習につなげる、という流れを確立させることが重要だと考えます。

このアイデアの問題点は、
・市民ホール、図書館は、どう整備するのか。(遺跡を現地保存すると、その上に施設は立てられなくなります)→この点については後日のブログで書きます。
・学術目的の発掘調査に切り替えたときに、調査の財源をどう確保するのか。(今は、施設の建設を前提として、国交省から交付金をもらうことになっている)
・遺跡の整備費用に、いくらかかるのか。その財源はどうするのか。

「現地で保存すること」を前提とすると、今までの施設整備の議論や設計など、大部分が白紙に戻されてしまうことは間違いありません。
そのため、今、大きな変更を決断するとなれば、課題はより多くなるでしょう。

しかし、新宮市は「文化奏でる都市」を標榜し、歴史や文化を大切にしていくまちづくりを行うと総合計画で謳っています。
その一方で、遺跡を壊して新たな建物を建てるというのは、歴史や文化を大切にする、という文言と矛盾が生じているのではないでしょうか。
私は、それがまず大きな理念的・政策的な問題点だと捉えています。

***
この遺跡をどのように取り扱い、施設建設をどのように進めていくのかは、最終的には「市の判断」になります。
市の判断、というのは、イコール「市長の判断」ということです。

「今、建てないでいつ建てるのか」という文化複合施設の建設の期限にやきもきしている状態のまま、政策判断を行うのではなく、ぜひ、大局的な見地に立ち、遺跡が新宮市で発見された意義を捉えて、それを後世にいかに伝え、どのように新宮市を発展させる礎とするかという理論を練り上げなければなりません。

今、市が何をすべきか決断するためには、根拠に基づいた理論を構築し、遺跡・文化複合施設に対して、どういった論拠の元で「判断」を行うのか、しっかりと「説明責任」を果たしていくことが必要です。

私自身の「どうすべきか」という考えについて、「遺跡」に関するものは本日書いた通りです。
後日、「文化複合施設(ホールと図書館について)」と、「新宮市における遺跡と文化複合施設の意義」についてブログをアップします。
また、これら一連の議論における問題点も、書いていくつもりです。

5/21現地説明会写真
▲写真は5月21日に行われた現地説明会で撮影したものです。